ウエアラブル端末が拓く未来

ウエアラブル端末が拓く未来

2014年3月31日

毎年1月に米国ラスベガスでコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)が開催されます。CESは取引専用の見本市で、一般公開されていません。この見本市では多くの新製品が発表され、多くのプロトタイプが展示されますので、今後の業界の動向を感じ取ることができます。

今年2014年のCESは、ウエアラブル(身に着けて使う)端末機器に関する出展企業がおよそ300社に上りました。たくさんのウエアラブル端末関連の技術、製品及び機能部品などが登場しました。スマホの普及により各種センサー類やデバイス類の超小型化が急速に進み、ネットへの常時接続も可能になったことから、身に着けて使うコンピューター、例えばメガネ型や手首に装着するリストバンド型などのウエアラブル端末が一気に開花時期を迎えたという感じです。今回は、日本経済新聞社の公表記事・写真を引用して、このウエアラブル端末の最新情報について紹介します。

ウエアラブル端末には、CESに出展された製品やプロトタイプの動向から見て、大きくは二つの流れがあります。

一つの流れは、身体に装着することでユーザーの生体情報(バイタルサイン)を常時観察し、健康増進やフィットネスに役立てることを目的とするセンサー型機器です。体温、脈拍、血圧、血糖値や、日々の歩数や睡眠状態などを測定し、これらのデータ群から有用な情報を抽出して、ユーザーに提示します。右の写真は、リストバンド型端末です。この端末にはディスプレーはなく、この端末で取り込んだ生体情報やライフログはスマホ側で一括管理します。健康志向が高まる今日、この分野のウエアラブル端末は私たちに対して大きな訴求力を持っていますので、急速に大きな市場が広がる可能性があります。

もう一つの流れは、スマホやタブレット(多機能携帯端末)などの既存のネットワーク端末と連携して、スマホなどの利便性や操作性を更に拡大するコンパニオン型ウエアラブル機器です。その代表とされるのが、米グーグルのメガネ型端末『グーグル・グラス』です。この端末は、メガネの右目にあたる部分に小型の透過性ディスプレーを搭載しており、現実の風景に情報映像を重ね合わせる形で、目の前に情報を表示します。レストランの道順や地図、店舗の情報や天気予報などを閲覧できたり、動画や写真も撮影できます。撮影した写真などを同時にネットに投稿したり、テレビ電話の相手に見せることもできます。 このグーグル・グラスは、既に一部の限られたユーザーには使用されており、今後の活用方法などに関する調査に役立てられています。今年の年末には、価格を下げたグーグル・グラスが一般販売される見通しです。

グーグル・グラスの活用法の一例として、『グラス目線でのスポーツ中継』が始まろうとしています。今年のアメリカン・フットボールの王者決定戦スーパーボールでは、試合本番の前後に、選手やレポーターがグーグル・グラスを装着し、グラス目線で試合前の状況や試合後の状況を実況中継し、話題を呼びました。著作権や放映権などの条件が整備されれば、本格的にグラス目線のスポーツ中継が放映されることになるようです。

このメガネ型端末の実用化・普及を目前にして、アメリカでは既に規制の動きも始まっています。米ウェストバージニア州では今年3月、自動車の運転中にヘッドマウント型ディスプレー付きウエアラブルコンピューターを装着することを禁じる法案が提出されました。これが可決されると、同州では運転中のグーグル・グラスの使用は交通違反になります。

グーグルは、今年2月にグーグル・グラスの利用ガイドラインを公表しました。それによると、『グラスのメリットを大いに活用してほしい。グラスは現実社会との関わりを助けるための機器であり、現実社会から隔離されるためのものではない。友達と一緒に行動しながら利用したり、飲食店の道順を調べたり、飛行機の発着時間の遅延などの情報を得るのに最適。またハンズフリー機能を活かして、料理をしながらレシピを見たり、従来では不可能だった独特な視点の写真を撮影したりして楽しんでほしい。そして何よりも重要なことは「許可を取る」こと。他人の写真や動画を撮る場合は必ず許可を求めるべき。』 また、『グラスを長時間使用しないこと、激しいスポーツ時に使用しないこと。着用時はプライベートの時間・空間を期待しないこと、不作法にならないこと。』および『携帯電話のカメラを禁止している場所ではグラスも禁止、携帯電話の電源を切るように言われたらグラスの電源も切ること。』などを求めています。

ウエアラブル端末は、個人用途やビジネス用途など、今後幅広くその活用が広がっていくものと思われます。この先、どんな世の中が待っているのでしょうか。

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