平成の大遷宮
平成の大遷宮
2012年12月31日
平成25年は、伊勢神宮および出雲大社における遷宮(せんぐう)の神事の年です。伊勢神宮は20年に一度の式年遷宮が行われる予定であり、出雲大社は60年ぶりの遷宮が現在行われています。遷宮とは、神社の正殿や本殿を造営・修理する際や、新たに建てた場合に、御神体を遷すことです。伊勢神宮および出雲大社の公式ホームページの記事を引用して、遷宮に関する事柄を紹介します。
伊勢神宮では、第62回目の神宮式年遷宮が平成25年の秋に行われます。式年とは定められた年という意味で、伊勢神宮では20年に一度、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を御祭神とする内宮(ないくう)と豊受大御神(とようけおおみかみ)を御祭神とする外宮(げくう)の両正宮において行われます。第1回の式年遷宮が内宮で行われたのは、持統天皇4年(690年)のことです。以来、戦国時代等に一時中断することもありましたが、1300年に亘って続けられてきました。前回の第61回は平成5年秋に行われています。
式年遷宮は、現在ある正殿などの建物とは別の場所に、正殿を始め御垣内の建物全てを新造し、更に殿内の御装束や神宝を新調して、御神体を新宮へ遷します。掘立柱(ほったてばしら)に萱(かや)の屋根が特徴の神宮の建築様式は「唯一神明造」と呼ばれ、弥生時代にまで遡る高床式穀倉の姿を今に伝えています。建物が完成するまでには、ほぼ10年の歳月を要します。造営と並行して、御装束神宝もまた古例に従って調製されます。御装束とは、正殿の内外を奉飾する御料の総称で、525種、1085点を数えます。神宝とは調度の品々で、189種、491点あります。ところで、式年遷宮はなぜ20年に一度なのでしょうか。建物の耐用年数など諸説あるなかで、一つが「技術伝承説」です。20年前の遷宮で師匠の下で技を学んだ弟子が、今度は師匠として次世代を担う若者に手本を示し、建築や伝統工芸の優れた技術を守り伝えるという意味を持っています。
縁結びの神様として知られる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)をまつる出雲大社では、現在60年ぶりの遷宮が行われています。現在の本殿は、1744年に造営され、これまで3度の遷宮が行われました。平成20年4月に、御祭神である大国主大神が本殿から仮殿に遷座され、翌21年から、本殿のみならず摂社・末社も、修造工事が進められてきました。本殿の修造は、大屋根檜皮(ひわだ)の撤去、野地板の修理などを経て、新しい檜皮による葺き作業も完了し、平成24年の夏には、修造期間中本殿を覆っていた大きな素屋根も取り除かれました。平成25年5月10日には、御神体が修造の終わった本殿に遷されます。
出雲大社の建築様式は「大社造」と呼ばれ、伊勢神宮の「唯一神明造」と並ぶ最古の様式です。本殿大屋根の面積は約180坪、防水性に優れる檜皮が葺かれており、軒先の厚さは1mにもなり、約64万枚という膨大な檜皮が使われています。檜皮の1枚1枚が丁寧に竹釘で固定されています。竹釘は燻しており、腐らず、虫も付きにくく、また丈夫なので、檜皮同士の固定に適しています。今回の修造では、過去の修造を知る職人も記録もない中、工事前の調査によって先人の様々な技と工夫が明らかになっています。その一つが「ちゃん塗り」です。鬼板や千木・勝男木などを覆う銅板には、松ヤニやエゴマ油、鉛、石灰を混ぜた「ちゃん塗り」塗装が施されています(右の写真)。銅板は表面に緑青ができると丈夫で長持ちしますが、緑青ができるまでの期間を、この「ちゃん塗り」が保護するのです。
私は伊勢神宮には3度お参りしていますが、神域に入ると、いつも清らかな厳かな気持ちになります。お参りをした後の「おはらい町」を歩くのも、味処や土産物店などがあり、大変楽しいものです。出雲大社には一度もお参りしたことがありませんので、修造が終わった後の出雲大社に、是非お参りしたいと思っています。