遺言の種類

普通の方式として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類、特別の方式として「死亡の危急に迫った人の遺言」「伝染病隔離者の遺言」「在船者の遺言」「船舶遭難者の遺言」の4種類があります。

特別の方式4種類は、危急時の特別なもので、一般には用いることのない遺言です。

自筆証書遺言

遺言者が遺言の全文(※)を自書し、かつ日付、氏名を自書し、これに押印することによって完成させる遺言を自筆証書遺言といいます。
自筆証書遺言は、次の方式に従って作成する必要があります。

 

①遺言者が遺言の本文を自書する(⇒※ 2019年1月13日より方式緩和)

<改正後>(2019年1月13日施行)

遺言の内容のうち本文については必ず自書する必要がありますが、遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいことになりました。財産目録については、パソコンによる作成や預金通帳のコピーをもって替えることができます。ただし、財産目録の各頁に遺言者自身の署名押印が必要です。

 

文章に加除・訂正など変更した部分があるときは、その場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更した箇所に押印しなければ、遺言書自体が無効となります。
この変更の手続に不安があるときは、面倒でも改めて書き直した方がよいでしょう。

 

②遺言者が日付を自書する

日付は、年月だけを記載し日の記載が無いもの、例えば平成23年9月吉日という記載のものなど、遺言成立の日が確定できないものは遺言書としては無効です。


尚、先に遺言書を作成し、その後更に遺言書を作成し、複数の遺言書が存在する場合に、双方の内容が抵触する部分については、後の日付のある遺言書の内容が有効となります。

 

③遺言者が氏名を自書する

氏名の表示は、遺言者の同一性が確認できる程度のものが必要とされていますので、通常は戸籍上の氏名が用いられます。ただし、同一性が認識される限り、遺言者が日常用いているペンネーム、雅号、芸名などを用いても差し支えないことになって
います。もっとも、遺言の効力に問題を残さないためには、戸籍上の氏名を用いる方が無難です。

 

遺言者の氏名が同一の氏名の他人と混同される恐れがある場合は、氏名だけでは足りず、住所、職業、雅号などを併記して、遺言者が誰であるかを明確にすることが必要です。

 

④遺言者が自分の印を押印する

押印は、氏名の自書と同じ趣旨で、遺言者の同一性と遺言者の意思を確認するために要求されています。印は実印でも認印でもよいとされていますが、必ず遺言者自身の印でなければなりません。したがって、本人の印鑑として登録している実印を用いる方が無難です。
押印の場所については特に制限はありませんが、遺言書の末尾の氏名の下に押印することが一般的です。

 

 

自筆証書遺言の場合、遺言を執行するためには家庭裁判所の検認が必要とされています。家族や相続人などの遺言書の保管者または発見者は、相続の開始を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出し、その検認を受けなければなりません。遺言書が封印されている場合には、検認手続の中で相続人またはその代理人の立会いのもとに開封することになっています。

尚、法改正により、遺言書保管所に保管された遺言書については、家庭裁判所の検認は不要とされ、直ぐに遺言の執行ができることになりました。

 
自筆証書遺言のメリットは、最も簡便で費用も掛からない点です。しかし、一方で、デメリットとして、記載内容が不明確または方式が不備であることによりその効力が認められないこともあり、また、紛失・隠匿・偽造などの危険もありますので、注意が必要です。

自筆証書遺言の保管制度

自筆証書遺言書の保管制度が2020年7月10日から始まりました。その詳細は次のとおりです。

 

自筆証書遺言書のメリットは、いつでも、どこでも、かつ安価に作成できることです。デメリットは、遺言書の紛失や改ざんの恐れがあること、遺言書の実行をする前に家庭裁判所における検認が必要なことです。

自筆証書遺言のデメリットを緩和するために施行されたのが、法務局における自筆証書遺言の保管制度です。遺言書の原本は法務局で保管され、検認が不要です。また、保管の手続の際に、遺言書の内容のチェックはされませんが形式のチェックはされますので、形式の不備で遺言書が無効となるリスクも少なくなります。

 

(1)遺言書保管所

自筆証書遺言書の保管に関する業務は、各地区の法務局のうち「遺言書保管所」として指定された法務局で行われます。

 

(2)遺言書の保管の申請

【保管証】遺言書の保管がなされると、遺言者の氏名、遺言書保管所の名称、保管番号等が記載された保管証が交付されます。

【手続きができる人】遺言者本人に限られます。遺言者の法定代理人または任意代理人(例えば弁護士)による申請は認められません。

【死亡時の通知】遺言者が死亡した場合に、遺言書が保管されていることを、指定した人に通知してもらうことができます。

【管轄】遺言者の住所地、遺言者の本籍地、遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所で申請手続を行います。

【手続き方法】遺言者本人が遺言書保管所に出向いて申請します。本人確認のため、個人番号カードや運転免許証など顔写真付きの公的な証明書を提示する必要があります。手続きは、原則として、予約が必要です。

【遺言書の要件・様式】民法の定める要件を満たしていること、無封であること、および以下の様式に合致していることが必要です。

・用紙は、文字が明瞭に判読できる日本産業規格A列四番の紙であること。

・縦置きまたは横置きかを問わず、縦書きまたは横書きかを問わない。

・各ページにページ番号を記載すること。

・片面のみに記載すること。

・数枚にわたるときであっても、とじ合わせないこと。

・余白を設けること。(用紙を縦置きにしたときの上が5㎜以上、左が20㎜以上、右が5㎜以上、下が10㎜以上。)

【手数料】申請1件につき3,900円(収入印紙で納付)

 

(3)遺言書の閲覧

遺言者は、保管されている遺言書の原本またはその画像情報等を閲覧することができます。遺言者の死後であれば、関係相続人等(遺言者の相続人、受遺者、遺言執行者等)も閲覧することができます。関係相続人等が閲覧すると、他の相続人等に遺言者が保管されている旨の通知が行われます。

【閲覧できる人】・遺言者の存命中:遺言者に限られます。・遺言者の死後:関係相続人等に限られます(法定代理人も可能)。

【閲覧先】・原本を閲覧する場合:遺言書の原本が保管されている遺言書保管所 ・モニターで閲覧する場合:全国の遺言書保管所

【閲覧の方法】遺言者本人または関係相続人等が遺言書保管所に出向いて閲覧します。原則、予約が必要です。

【手数料】・原本の閲覧:1回につき1,700円 ・モニターでの閲覧:1回につき1,400円 (どちらも収入印紙で納付)

 

(4)遺言書保管事実証明書の交付請求

遺言者の死後、遺言書が保管されているかどうかを確認したい場合、「遺言書保管事実証明書」の交付請求をします。

尚、遺言者が保管申請をする際に申出をすれば、遺言者の死後、推定相続人等のうち1名に、遺言書が保管されている旨の通知をしてもらうことができます。

【手続きができる人】誰でも請求できますが、相続人が請求した場合は、内容のいかんにかかわらず、保管されている遺言書があれば、存在している旨の証明がなされます。請求者の法定代理人による請求も可能です。受遺者として遺言書に指定されている人が請求した場合も、存在している旨の証明がなされます。

それ以外の者が請求した場合は、遺言書が存在するかしないかを明示しない形で証明がなされるだけです。

【手続き先】全国の遺言書保管所

【手続き方法】窓口または郵送で交付請求をします。窓口で請求する場合は、原則、予約が必要です。

【手数料】1通につき800円(収入印紙で納付)

 

(5)遺言書情報証明書の交付請求

遺言者の死後に関係相続人等は「遺言書情報証明書」の交付請求をすることができます。交付されると、他の相続人等に遺言書が保管されている旨の通知が行われます。

遺言書情報証明書は、家庭裁判所の検認を経ることなく、不動産の相続登記手続き等の遺言の実行に使用できます。

【手続き先】全国の遺言書保管所

【手続き方法】窓口または郵送で交付請求をします。窓口で請求する場合は、原則、予約が必要です。

【手数料】1通につき1,400円(収入印紙で納付)

 

(所長)

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