成年後見制度とは、ある人(以下「本人」といいます。)の判断能力が精神上の障害により不充分な場合(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等)に、本人を法律的に保護し、支えるための制度です。
例えば、本人のために預金の解約、福祉サービス契約の締結、遺産分割協議、不動産の売買等をする必要があっても、本人の判断能力が全くなければ、そのような行為はできませんし、判断能力が不充分な場合にこれを本人だけで行うと、本人にとって不利益な結果を招くおそれがあります。そのような場合に、家庭裁判所が本人に対する援助者を選び、その援助者が本人のために活動する制度が成年後見制度です。
したがって、本人の障害が身体的なものだけの場合や、本人が単なる浪費者、性格の偏りがあるだけである場合には、この制度は利用できません。また、本人を保護するための制度ですから、本人の財産を贈与したり、貸し付けたりすることは原則として認められません。親族が本人の財産の内容を知る目的でこの制度を利用することも、適切ではありません。
成年後見制度では、本人の保護だけでなく、以下の理念・考え方を取り入れて、制度の運営を行っています。
①ノーマライゼーション
判断能力が低下した者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする理念。
②自己決定権の尊重
本人の判断能力が充分でなくても、できる限り本人の意思を尊重しながら支援するべきであるとする理念。
③残存(現有)能力の活用
認知症高齢者であっても、知的障害者であっても、精神障害者であっても、判断能力は不充分ではあっても、全ての意思能力が欠落しているわけではありません。また、判断能力は不充分でも芸術的な才能がある場合も、多々あります。そのような残存(現有)能力を最大限に引き出して活用すべきという理念。
④身上配慮
成年後見人等の職務は財産的なものに偏りがちですが、その職務を行うにあたっては、本人の心身・生活の状況に配慮して行わなければならないとする考え方。
成年後見制度には、既に判断能力が低下している人を対象とした法定後見制度と、将来判断能力が低下した場合に備えて、契約に必要な判断能力がある間に、自ら将来の後見を委任する契約を結んでおく任意後見制度の2種類があります。
また、法定後見には、本人の判断能力の程度に応じて成年後見、保佐、補助の3つの類型があります。
法定後見制度(法律による後見制度)
成年後見…本人の判断能力が全くない場合に、家庭裁判所が成年後見人を選びます。
保佐 …本人の判断能力が著しく不充分な場合に、家庭裁判所が保佐人を選びます。
補助 …本人の判断能力が不充分な場合に、家庭裁判所が補助人を選びます。
任意後見制度(契約による後見制度)
本人に判断能力があるうちに、将来判断能力が不充分な状態になることに備え、公正証書を作成して任意後見契約を結び、任意後見人を選んでおきます。
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