福島第一原発事故に思うこと
福島第一原発事故に思うこと
2011年5月4日
2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災では、大地震の後に襲った大津波により、甚大な被害が発生しました。犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
東日本大震災では、もう一つ世界の注目を集める大事故、世界のエネルギー供給計画に影響を及ぼす原子力発電所事故が発生しました。東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故です。この福島第一原発では、地震直後に原子炉の運転を自動停止しましたが、津波の被害により、原子炉の安全維持の根幹といえる炉心冷却システムが機能しない事態となりました。この為、原子炉爆発や炉心溶融という最悪の事態を回避する必死の作業が続けられていますが、現時点ではまだ事態収束の目処は明確になっていません。この間、13号機では、「炉内水位低下→燃料棒露出→水蒸気・水素発生→炉内圧力上昇→排気→建屋内に水素漏洩→水素爆発→1,3号機建屋損壊、2号機圧力抑制室損傷」、そして4号機では、「使用済み核燃料プール水位低下→燃料棒発熱→水素発生→水素爆発→4号機建屋損壊」という事態が起こり、周辺地域の放射能汚染が広がっています。
テレビで放映される福島第一原発の状況を見ながら私が感じたこと、素朴な疑問は次の通りです。皆さんもきっと同様に感じたことと思います。
(1)何故発電所は津波の直撃を受けたのか。
海のすぐ傍に作られている原発は、当然に大津波にも耐えられる高さや構造になっている、と私は思っていました。『想定外』の津波の高さと発表されていましたが、津波の想定高さは5.7m、原発施設の高さは10m、実際の津波高さは14mであり、想定高さがちょっと低過ぎたのでは…、と思ってしまいます。場所は離れていますが三陸沿岸の場合、過去に何度も津波の被害に遭っており、福島第一原発の想定高さをはるかに凌ぐ記録が残っているとのこと。ちなみに東北電力女川原発の場合、施設の高さが15m、実際の津波高さが14mで、津波被害を免れました。
(2)緊急事態用であるべき非常用発電機が何故緊急時に故障したのか。
外部からの電源もストップしている中、炉心冷却システムを稼働させる最後の砦となる2台ある非常用ディーゼル発電機が、どちらも津波で流され、使えなくなりました。この発表を聞いた時、私は耳を疑いました。非常用なのだから、万一を考え、最初から海水に浸からない高い場所に設置するのが当然でしょ、と。更には、海水汲み上げ用ポンプのモーターも、海水に浸かって故障したとのこと。
(3)放射線を浴びずに作業が出来る装備を日本は持っていないのか
強い放射線量を浴びる恐れが高い環境下で、決死の思いで放水や注水作業を行う消防隊員、自衛隊員の姿。安全に遠隔操作のできる消防(注水)車がほしい。爆発事故を起こした原発建屋内を動き回りながら撮影や測定をしているアメリカから借りた調査ロボット。日本は世界に冠たる技術大国、ロボット大国のはずでは…。
(4)事故対策の推進責任はどこにあるのか
原発の事故の状況・見通し、放射能漏れの状況等が、政府(官房長官)、原子力安全・保安院、東京電力(株)の3者、場合によっては原子力安全委員会も加えた4者によって別々に発表されている。こんな大事故が起きているのに、全体をまとめる組織はないのか?と心配になります。
このような素朴な疑問を整理してみると、「想定(基準)を超える津波がもし来たら」とか、「もし爆発事故や放射能漏洩が起きたら」との前提に立った対応や準備が何もなされていないことを感じます。不幸にも大事故が発生した場合を仮定した準備はなされていない、する必要がない、ということでしょうか。私の勝手な推測ですが、原子力を取り巻く事情は非常にデリケートなので、事故の発生を前提とした対応・準備は国民に不安を与えかねない為避けるべき、という国の方針だったのでしょうか。また、津波の想定高さ等、安全基準の基となるべき科学的根拠に異論が出た場合に、その議論は国民に公開されてきたのでしょうか。非常用発電機をもっと高い位置に移すことやポンプモーターを防水仕様に変えることは簡単にできることだと思いますが、それも基準や規制に縛られ、出来なかったのでしょうか。それが出来ているだけでも、緊急炉心冷却装置は稼働し、大事故は発生しなかったかも知れません。今回の福島第一原発事故は、私には、発生当初から何故?何故?と腑に落ちない事だらけの大事故です。
関係者の皆さんが、事態収束に向けて必死の努力を続けています。早く安全に収束してほしいと願っています。