任意後見
今月の民法サークル「任意後見」
2014年8月22日
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【6月民法サークル】
6月の民法サークルのテーマは「任意後見」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。
【例題】
『私は主人の両親と自分の両親の老後の世話を致しました。正直言って、疲れ果てました。私の後半生は老人介護の日々であり、何一つ楽しみを知らない憂鬱な日々でした。そしてやっと介護から解放された現在、私の身体は病に蝕まれて病院通いの毎日ですが、子供には私と同じ思いはさせたくないので、病気のことは隠し通しています。しかし、いつか一人で身の回りのことができなくなる日が来ると思うと、その時のための対策として、今から財産管理や身上監護を誰かに委任しておきたいのですが、どのような方法があるのでしょうか。』
【解説】
自分の判断能力が健全なうちに、将来自分の判断能力が認知症などにより大きく低下した場合に備えて、財産管理や身上監護を誰かに委任しておくことは可能です。この制度を任意後見制度といいます。委任をしたい人と公正証書(公証役場で作成)による任意後見契約を締結しておきます。万一自分の判断能力が低下した場合には、任意後見契約が発効し、委任された人が任意後見人となって、家庭裁判所及び家庭裁判所が選任した任意後見監督人の監督の下で、契約した内容に沿って自分を支援してくれます。
ただし、平野先生によれば、日本は義理人情の社会で、契約観念が遅れているので、任意後見契約に基づいて支援が行われるこの任意後見には危険を伴うとのこと。ヨーロッパは契約観念が発達した社会であり、任意後見が主流となっているとのことです。
(所長)