知的障害の息子
今月の民法サークル「知的障害の息子」
2014年5月30日
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【5月民法サークル】
5月の民法サークルのテーマは「知的障害の息子の後見」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。
【例題】
『私には知的障害の息子が1人います。手のかかる子ほど可愛いといいますが、実際この子がいとおしく可愛くてなりません。でも子供のうちは親権者として私たち夫婦で何事も保護してやれますが、成年に達してからは、どうすればこの子を守ってやれるのでしょうか。とくに、親亡き後のこの子の財産管理や身上監護はどうなるのかと思うと、心配で眠れない日もあります。』
【解説】
20歳に達すると成人となり、親権者は存在しなくなります。これは知的障害者の場合も同様です。従って、自分の財産の管理等ができない知的障害者の場合は、親権者に代わって財産管理と身上監護をする支援者が必要になります。
このように、知的障害者など精神上の障害により事理を弁識する能力が不充分な人を保護する制度が成年後見制度と呼ばれるもので、民法第843条からその規定が記載されています。
この例題の場合は、息子が20歳に達する前、即ち親権が終了する前に、家庭裁判所に成年後見開始の申立てを行い、息子の成年後見人を選任してもらいます。成年後見人は、息子の支援者として、財産管理や身上監護などの法律行為を息子に代わって行います。
成年後見人は家庭裁判所が選任しますが、成年後見開始の申立ての際、候補者を挙げることができます。特に問題がなければ、申立てをした親が息子の成年後見人に選任されることになります。成年後見人が死亡した場合は、家庭裁判所が後任者を選任します。成年後見人は複数でもよく、法人でもなることができます。
尚、この制度においては判断能力の状況によって3類型あり、本人の「事理を弁識する能力が全くない」場合は後見類型、「事理を弁識する能力が著しく不充分」な場合は保佐類型、「事理を弁識する能力が不充分」な場合は補助類型となり、支援者の権限や支援の内容等に違いがあります。
(所長)