子の財産管理権

今月の民法サークル「子の財産管理権」

2014年4月9日

 静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。

【3月民法サークル】

 3月の民法サークルのテーマは「子の監護・教育の権利・義務」と「子の財産管理権」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。

【例題】 

  『私たち夫婦には息子が1人います。夫は独断的性格の人で、息子のことになると何事も自分の思い通りにしたがり、私の意見を聞いてくれません。先日は息子を塾に入れるというので、私の反対を押し切って入塾申込手続をしてきました。息子はまだ遊びたい盛りの歳で、塾通いの意思などまったくないのにかわいそうです。こんな大切なことを妻の意思を無視して夫一人で決めていいのでしょうか。  また私の実家の父が、孫が可愛くて私の息子に土地を贈与してくれました。夫は事業資金を借り入れるにあたり、その息子名義の土地に抵当権を設定したいといいます。私は実家の父の好意を踏みにじるような気がして、息子の財産に手を付けるのに大反対ですが、夫は「親が息子の財産を管理するのに文句を言うな」といって、融資を受ける準備を始めています。これを止めさせることは可能でしょうか。』

【解説】

 親は親権者として、子(未成年者)に対して「監護・教育の権利・義務」「居所指定権」「懲戒権」「職業許可権」「財産管理権と代理権」「婚姻同意権」「縁組同意権」などを有しています。

 民法第820条(監護及び教育の権利義務)には「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」とあります。

 親は子に対して教育を受けさせる権利があり義務を負っていますので、本例題のように、息子を塾に入れる権利を親は持っています。ただし、父親(夫)だけでなく母親(妻)も親権を持っていますので、一方が独断で親権を行使するのではなく、両方の親権者が納得する形で親権を行使することが望まれます。 実際のところ、子の教育については夫婦で意見が割れることもよくあります。どのように収めるか…、なかなか難しいですね。

 民法第824条(財産の管理及び代表)には「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表(=代理)する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。」、民法第826条(利益相反行為)には「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」とあります。

 本例題の場合は、息子の土地を管理している父親が、息子の土地に抵当権を設定しようとしていますので、息子と父親の利益が相反する形になります。このような場合は、家庭裁判所に息子の特別代理人選任の申立てを行い、家庭裁判所の選任した特別代理人が抵当権設定の是非を判断することになります。一般的には、父親が勝手に息子の土地に抵当権を設定すると、無権代理行為又は代理権の濫用となり、違法です。抵当権が設定されても無効になります。

 ただし、最高裁の下した判例では、本例題に似た実際の事件に対して、「利益相反には該当せず、親権者による代理権の濫用には当たらない」としたものがあります。本例題に即して言えば、息子の土地に抵当権を設定することで事業資金の借り入れができ、結果として家計を維持できる又は事業を継続できるのであれば、それは息子の為でもあり、利益相反とはならず、代理権の濫用には当たらないという訳です。

 また、祖父(妻の実家の父)が孫(妻の息子)に土地を贈与するときに、「父親には管理させない」又は「母親にのみ代理権を与える」などの条件を付けることができます。このように条件を付けることによって、本例題のような問題の発生を防ぐことができます。これに関しては、民法第830条などに関連規定があります。 

 (所長)

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