離縁・特別養子縁組

今月の民法サークル「離縁」「特別養子縁組」

2014年4月7日

静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。

【2月民法サークル】

2月の民法サークルのテーマは「普通養子縁組の離縁」「特別養子縁組」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。

【例題1】≪ 普通養子縁組の離縁 ≫

『私たち夫婦は「コインロッカーベビー」を養子にして、実の子に対するのと変わらなく可愛がって育ててきました。素直で利口な息子は自慢の種でしたが、高校生になったある日、誰に聞いたのか自分の素性を知って人格が変わってしまいました。こっそりお金を持ち出して遊びまわり、お金が見つからないと、私たちが大切にしている貴金属などを持ち出して売り払い、年齢を偽ってまでサラ金から借金し、覚醒剤にまで手を出し始め、警察に逮捕される始末です。私たちに対しては、家庭内暴力は毎日のことで、「くそ爺、くそ婆」と口汚く罵倒します。実の子と思えば我慢せざるをえないのですが、原因が彼の出自にあるだけに、私たちには手の施しようもなく、夫婦で憔悴しきっており、もう我慢の限界にきています。離縁することも考えてはみるのですが、身寄りのない子が離縁後どうして生きていけるのかを思うとかわいそうで言い出せないのと、息子が怖くて話し合うこともできません。』

【解説1】

養子縁組を解消する民法の規定には、協議上の離縁等を規定した第811条と、裁判上の離縁を規定した第814条があります。 協議上の離縁については、養子が15歳以上であれば、自分で離縁や縁組の判断を行うことができます。養子が15歳未満の場合は、実親が代わって判断をします。

裁判上の離縁については、養親又は養子は次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを行うことができます。 ①他の一方から悪意で遺棄されたとき。 ②他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。 ③その他縁組を継続し難い重大な事由(養子が養親に対して暴力をふるう事例など)があるとき。

この例題の場合、養子である息子は高校生になっていますので、年齢が15歳以上であれば、養親は息子と直接に離縁の協議を行うことができます。またこの例題では、息子が養親に対して毎日のように家庭内暴力をふるっていますので、上記「③その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当し、養親は息子を裁判で離縁することが可能です。

【例題2】≪ 特別養子縁組 ≫

『私は子だくさんで、18歳の時に長男を生み、42歳で末っ子を生みました。末っ子は現在5歳になりますが、私より長男の嫁になついていて、子供のいない長男夫婦はわが子のように可愛がっています。おじいちゃん、おばあちゃんのように老いた親より、若いパパ、ママのほうが子供にとっても嬉しいにちがいないと思い、この子が出生した時点で長男夫婦の子として届け出ればよかったと思うことしきりですが、今となっては仕方ありません。特別養子制度というのがあると聞きましたが、この子を長男夫婦の養子にするについて、この方法が利用できるのでしょうか。』

【解説2】

特別養子縁組は民法第817条の二〜第817条の十一に規定されています。特別養子縁組は、養子とその実親との親族関係を断ち切ってしまう縁組制度です。一般の養子縁組制度は、養子とその実親との親族関係はそのまま残りますが、特別養子縁組の場合は、養子とその実親との親族関係は無くなり、養親との親族関係だけになります。

特別養子縁組が成立するには次の条件を満たすことが必要です。 ①養親となる者は配偶者のある者で、かつ夫婦で縁組をすること。 ②養親となる夫婦の年齢は25歳以上。ただし、夫婦の一方が25歳に達していない場合においても、その者が20歳に達している場合は、縁組が可能。 ③養子となる者の年齢は6歳未満。ただし、その者が8歳未満であって、6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、縁組が可能。 ④養子となる者の実父母の同意があること。ただし、父母がその意思を表示できない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。

この例題の場合、末っ子はまだ5歳ですから、末っ子の実父母と長男夫婦の同意があれば、特別養子縁組は可能です。

例題1の「コインロッカーベビー」の場合、実父母が不明であり実父母の同意が得られないため、 特別養子縁組が成立せず、一般の養子縁組となります。

ところで、今年(2014年)4月3日に宇都宮家裁で画期的な判決がおりました。養父母の訴えにより、実親の不同意にもかかわらず特別養子縁組が認められたのです。訴えを起こした夫婦は、別の女性が生んだ女の子を生後11日目から7年間育てていて、法律上実の親子関係となる特別養子縁組を求め、家庭裁判所に訴えを起こしていました。女の子を生んだ女性は、自分では育てられないが親子の縁は切りたくないので同意しないと主張していました。家庭裁判所は、「法律で求められている実の親の同意はないが、新たな親子関係を築くことが子供の福祉のために必要だ」と指摘し、特別養子縁組を認めました。

(所長)

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