養子縁組
今月の民法サークル「養子縁組」
2014年2月8日
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【1月民法サークル】
1月の民法サークルのテーマは「養子縁組」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。
『私たち老夫婦には子供がいません。最近は結構なケアハウスがたくさんできているから子供がなくても老後の心配はいらないと妻は言います。いまさら養子をもらって、いらぬ苦労をしたくないというのが本音のようですが、私はやはり子や孫に囲まれた老後を理想としてきただけに養子をもらいたいという気持ちが強く、いつも妻といい争いになります。私にはすでに結婚し子供もいる姪がおり、彼女は幼年の頃より叔父である私にとても懐いていて、欲のない心優しい女性です。私はいずれはこの姪を養子にして、死に水を取ってもらいたいと考えてきましたが、妻の反対や、姪の家族が賛成するかどうかの不安があって考慮中です。』
養子に関する規定は民法の第792条から第817条で記載され、養子縁組や離縁について要件が定められています。主な事項を説明します。
【縁組の要件】
①成人になった者は養子を持つことができる。 ②自分の尊属(父母や祖父母など)や年長者を養子にすることはできない。 ③配偶者のある者が未成年者を養子にする場合は、配偶者とともに養親となって未成年者を養子にしなければならない。 ④配偶者のある者が縁組をする(養子を持つ、又は養子になる)には、その配偶者の同意を得なければならない。 ⑤未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。ただし、自己又は配偶者の直系卑属(子や孫など)を養子にする場合は、許可を得る必要はない。
⇒例題の場合、④に該当し、妻の同意がないと姪を養子にすることはできません。
【縁組の効力】
①養子は縁組の日から、養親の嫡出子(婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子)の身分を取得する。⇒養子は実子と同じ権利・義務を持つことになります。
②養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称する。 ⇒例えば、山田さんが鈴木さんと結婚して氏を鈴木と定めた場合、結婚後に旧山田さんが高橋さん夫婦と養子縁組をして高橋さん夫婦の養子となっても、氏を高橋に変える必要はないということです。
【離縁】
①離縁の当事者の一方は、他の一方から悪意で遺棄されたとき、他の一方の生死が3年以上明らかでないとき、その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき、に限り離縁の訴えを提起することができる。
⇒娘と結婚して家に入ってくれた娘婿を、娘の親が養子にする例はよくありますが、娘夫婦が離婚するとどうなるでしょう。養子縁組の当事者は娘の親と婿ですから、結婚と養子縁組は無関係であり、離婚しても養子縁組は継続します。従って、離婚前に婿であった人は、当然ながら養子として養親に関する相続権などを持ったままです。家庭裁判所は、単純に離婚を原因とする離縁は認めてくれませんので、婿であった人が離縁に同意しない場合、養子縁組は解消できず継続するのが一般的です。娘婿との養子縁組を考えている娘の親は、慎重によく見極めてから行った方がよさそうですね。
(所長)