子の氏・戸籍の変更
今月の民法サークル「子の氏・戸籍の変更」
2013年12月28日
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【11月民法サークル】
11月の民法サークルのテーマは「子の氏と戸籍」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。
『私、甲野太郎は離婚歴1回、現在は再婚して妻と2人の男児のいるサラリーマンです。前妻との間には娘花子がおりましたが、離婚にあたり親権者を母と定めましたので、前妻が花子を連れて家をでました。前妻は離婚後は旧姓に戻り、乙山となったと聞いております。最近、必要があって戸籍謄本を取りましたところ、私の戸籍に長女花子の記載が残っていることに気づきました。後妻は、こちらに花子の親権があるわけでもないのに、いつまでも自分たちと同じ戸籍にいるのは迷惑だから早く出ていってもらいたいと立腹する始末で、どうしたものかと悩んでいます。』
親権者と子の戸籍の記載とは連動しないため、離婚に際し、子の親権者が母となり、母が父の戸籍から除籍されても、子の戸籍を母の戸籍に移す必要性は必ずしもありません。
民法の第791条(子の氏の変更)には「子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。②(省略)、③子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。」と規定されています。 また、戸籍法の第18条(子又は養子の入籍)には「父母の氏を称する子は、父母の戸籍に入る。②前項の場合を除く外、父の氏を称する子は、父の戸籍に入り、母の氏を称する子は、母の戸籍に入る。③養子は、養親の戸籍に入る。」と規定されています。
この事例の場合、花子の親権者である前妻は旧姓に戻ったようですが、花子は父の戸籍に入ったままですので、姓(氏)は甲野です。甲野太郎の戸籍から花子の戸籍の記載を除くためには、花子が氏の変更(甲野→乙山)の申し立てを家庭裁判所に行うことが必要です。花子が15歳未満の場合には、親権者(法定代理人)である前妻が花子の氏の変更の申し立てを行うことが必要です。ただし、氏の変更の申し立てを行うかどうかは、花子自身が判断することであり、又は、花子が15歳未満の場合は、親権者である前妻が判断することになります。
(所長)