嫡出否認の訴え
今月の民法サークル「嫡出否認の訴え」
2013年8月11日
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【7月民法サークル】
7月の民法サークルのテーマは「嫡出否認の訴え」に関するものでした。4例題について学びましたが、今回紹介する例題は次の通りです。
『高校生になる息子が理科の実験で血液型の検査をしました。その型は私と妻からは絶対に生まれるはずのない型でした。私はショックを受けて妻に問い質しました。妻が泣いて白状したことによると、結婚式前日に恋人だった男と最後の別れの性交渉を持ったというのです。妻自身も息子は私とのハネムーンベイビーだと信じてきたとのこと。可愛かったはずの息子ともこんなことがあってからは話もしなくなって、よそよそしい付き合いになりました。はっきり自分と息子の親子関係を切ってしまった方が気分が楽になるのではないかと思うようになりました。父子関係がないことの確認の裁判をしたいのですが。』
民法第774条、第775条、第777条により、夫は子が自分の子でないと思った時は、家庭裁判所に嫡出否認の訴えを起こすことが認められています。ただし、嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない、とされています。 この例題の場合は、子が高校生になっており出訴期間(時効)を過ぎていますので、嫡出否認の訴えを起こすことはできません。ただし、この例題の場合、別の方法として、父子関係不存在の訴えを一般の裁判所(地方裁判所等)に起こすことができます。このような確認の訴えには時効がありませんので、いつでも訴えを起こすことができます。 どちらの場合も、訴えが認められると、父親の戸籍から子は除籍されます。
これまで親子、父子として暮らしてきたのに、実は自分の子ではなかった…。皆さんだったらどのように判断しどのように行動するでしょうか。まず答えが出ないのではないでしょうか。
(所長)