夫婦間の贈与
今月の民法サークル「夫婦間の贈与」
2012年12月9日
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
11月の民法サークルのテーマは「夫婦間の贈与」でした。『私の夫は経済力があって優しくてとてもいい人なんです。でも浮気性で何度も泣かされました。でも、その都度、二度と浮気はしないといって謝り、慰謝料だといって彼は私に自分名義の不動産や車を贈与してくれたものですから、ついつい私も許してきました。』 ところが、最近また浮気の虫が騒ぎだし、小遣いに不足してきたことから、以前に私に贈与した不動産を返してほしいというのです。私は絶対いやだと言い張っているのですが、夫婦間の贈与は一方的に取り消せるのだと夫は強気にでてきています。そんなこと許されますか。』 さてこの場合、妻に贈与された財産の扱いはどうなるのでしょうか。
民法754条には「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と規定されています。
この規定どうりにいけば、夫は妻に贈与した財産を一方的に取り返すことができます。ところが、この規定は“宙に浮いている”のです。この例のような事案に対する最高裁の判例では、「取り消すことはできない」としています。既に夫婦間の関係は消えきっており、一般の契約の考え方が適用できる、としたのです。また、法制審議会では、夫婦間の贈与に関するこの条文を削除し、一般の贈与契約の定めと同じにすべき、とする結論を出しています。
(所長)