夫婦同居の義務
今月の民法サークル「夫婦同居の義務」
2012年10月28日
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
10月の民法サークルのテーマは「夫婦における同居・協力・扶助の義務」でした。 『夫婦には3人の幼い子供がいますが、夫は会社からの帰宅が遅く、家族とはほとんど口をききません。そのため妻が、もう少し家事育児に協力的になってほしいと頼んだところ、「俺は疲れている。子供はうるさくて嫌いだから家に帰りたくないんだ」といって、それ以降、会社の近くにアパートを借りて一人暮らしを始め、帰宅しなくなりました。アパート代がいるからといって、生活費も今までの半分しか妻に渡さなくなりました。』 さてこのような場合、妻にはどのような打つ手があるのでしょうか。
民法(第752条)には「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定されており、夫婦間では同居・協力・扶助の義務があります。 妻が家庭裁判所に申し立てると、家庭裁判所は夫に対して「同居の義務」の審判を出すことができます。ただし、夫がこれに従わなくても、強制執行はできません。しかし、夫が同居しない場合、「悪意の遺棄(知っていて無視したという意味)、同居義務違反」となり、妻が離婚を申し立てた場合には離婚の正当な理由(法律上の離婚理由)になります。尚、生活費については、家庭裁判所の審判により、夫の給料から生活費を差し引く強制執行ができます。夫の給料から生活費分を天引きして、妻に直接渡すようにすることができるのです。
ところで、DV(ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力)等で一方が同居を強制する場合はどうでしょうか。この場合は、別居も許されます。夫婦の間で同居の要件を満たしていない場合は、“別居の義務”も「同居の義務」の中に含まれているとのことです。
(所長)