遺言と異なる遺産分割
今月の民法サークル「遺言と異なる遺産分割」
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【8月民法サークル】
8月の民法サークルのテーマは「遺言と異なる遺産分割」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。(2014年8月22日 実施)
【例題】
『父は大変古風な人間で、明治の時代をそのまま今に生きているような人でした。先日、その父が亡くなり、遺言が発見されました。内容は、長男にすべての遺産を相続させる代わりに、長男は一族の長としてこれを統率し、困った者あるときはこれを助けるべし、というものでした。長男である兄は、「一族の長としての負担は御免こうむる。財産に関しては、兄弟が平等に分けようではないか」と提案しています。全員兄の意見に依存はありませんが、遺言を残した父の意思を無視することは許されるのでしょうか。』
【解説】
民法908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)に「被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。」と規定されています。従って、人(遺言者)は、遺言をすることによって、自分の遺産をどのように分割するかを定めることができます。
ただし、一方で「相続人全員の意思決定が遺言に優先する」という法解釈が定着しており、このことから、「相続人全員の合意がある場合には、遺言で指定された分割の方法と異なる遺産の分割を行うことができる」されています。
従って、例題の場合、兄弟で平等に父の遺産を分けることも可能です。
(所長)