相続権の喪失

今月の民法サークル「相続権の喪失」


静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。

【3月民法サークル】

3月の民法サークルのテーマは「相続権の喪失」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。(2015年3月27日 実施)

【例題】

『私には息子と娘が一人ずつおります。恥ずかしい話ですが、息子の方が若いうちから親に反抗的で、何かにつけて警察のご厄介になる始末で、手を焼いてきました。夫は生前から「あんな奴は子とは思わぬ」と口癖のように言っておりましたのに、遺言も書かずに先頃突然他界しました。死因に不自然な点があるというので捜査されましたところ、息子が金に困って父親の財産を狙い、殺人を図ったということが判明しました。息子が刑務所に送られてから、いかがわしい風情の女が訪ねてきて、息子とは内縁関係にあったこと、息子には認知した子供がいること、この子には祖父を相続する権利があることを主張して、夫の遺産を分配するように要求してきました。私は見知らぬ孫に夫の遺産を与えなければならないのでしょうか。いずれ私自身が死んだ時にも、息子や孫に相続権があるのでしょうか。もしあるのだとしたら、これを奪う方法を教えてください。』

 

【解説】

<欠格事由>

民法第891条には「相続人の欠格事由」が規定されており、この欠格事由に該当する者は相続人となることができません

・故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡させた者、死亡させようとしたために刑に処せられた者

・詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をすること、変更すること、取り消しをすることを妨げた者、詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、変更させ、取り消させた者

・相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

などは欠格事由に該当します。

ただし、上記で、執行猶予がついて、その期間が経過した後は、欠格事由に該当する者にあたりません。

 

 尚、欠格事由に該当する者に子(認知した子、養子を含む)がいる場合、その者に代わって子が代襲相続します。

 

<廃除>

民法第892条には「推定相続人の廃除」について規定されています。家庭裁判所が被相続人による推定相続人(そのままいくと相続人になる者)の廃除の請求を認めた場合、その者は相続人になることができません。

・遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができます。

同様に、民法第893条においては、遺言で推定相続人の廃除の意思表示ができる旨を規定しています。

 

被相続人が生前に廃除の請求を家庭裁判所にした場合、虐待や著しい非行を証明するものの提示を求められます。従って、廃除の請求が認められないこともあります。

虐待などを受けた証明が難しい場合は、遺言で推定相続人の廃除を指定すればよいとのことです。遺言で推定相続人の廃除を指定する場合、虐待などの証拠は求められておらず、虐待の状況などを具体的に書く必要はないので、原則的には廃除が確定するとのことです。

 

尚、廃除が確定した者に子(認知した子、養子を含む)がいる場合、その者に代わって子が代襲相続します。

 

上記の例題の場合、父親を殺害した息子は欠格事由に該当し相続人になれませんが、息子に認知された子は、息子に代わって代襲相続人となります。私(母親)の相続についても、認知された子に相続権があり、欠格事由に該当する息子に代わって代襲相続人になります。認知された子の相続権を奪うことはできません。

ただし、私(母親)が遺言を書くことによって、認知された子への相続を遺留分に限定することはできます。

 

 

 

 

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