相続人の不存在

今月の民法サークル「相続人の不存在」


静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。

【10月民法サークル】

10月の民法サークルのテーマは「相続人の不存在」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。(2015年10月23日 実施)

【例題】

『一生を独身で通したⅩ子さんは、身寄りがないままに先頃、ひっそり老人ホームでなくなりました。その老人ホームで20年近くお世話になっていたようです。その間Ⅹ子さんは以前ホームに勤めていて身の回りの世話をしてくれていたS子さんと、彼女が退職後も親しく交際を続け、S子さんはたびたびⅩ子さんを尋ねて話し相手になったり身上看護に尽くしたりで、Ⅹ子さんも晩年はS子さんを娘のように思って甘えきっていました。Ⅹ子さんにはかなりの預貯金が残されていましたが、相続人のいないⅩ子さんの遺志を推測すれば、S子さんに与えたいだろうと思われますが、残念ながら遺言がありません。遺産の行方はどうなるのでしょうか。』

【解説】

例題の場合、S子さんが利害関係人・特別縁故者として請求し、家庭裁判所が認めた場合、Ⅹ子さんの相続財産の全部または一部がS子さんに分与されることになります。その法律的な処理の流れは下に示す通りです。

相続人がなく、特別縁故者もいない場合は、相続財産は国庫に入ります。

平野先生のお話では、処理を依頼された弁護士さんなどは、面倒なので相続財産を直ぐに国庫に入れてしまうことが多いそうです。

 

【相続人がいない場合の法律的な処理の流れ】

民法第951条から第959条に規定されています。

①相続人のいない相続財産は法人(相続財産法人)になります。

②家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任し、相続財産管理人の選任を公告しなければなりません。

③管理人選任の公告から2カ月以内に相続人のあることが明らかにならなかった場合、管理人は、一切の相続債権者および受遺者に対して、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければなりません。ただし、その期間は2カ月を下ることはできません。

④前項の期間満了後、なお、相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、管理人または検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければなりません。ただし、その期間は6カ月を下ることはできません。

⑤前項の期間内に相続人である権利を主張する者がない場合、相続人がいたとしても、その権利を失います。

⑥相続人がいないことが確定した場合に、家庭裁判所は、特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者)からの請求により、相当と認めるときは、清算後残存すべき相続財産の全部または一部を特別縁故者に与えることができます。この請求は、④の期間の満了後3カ月以内に行わなければなりません。

<判例で特別縁故者に当たるとされた者の例>

 ・内縁の夫婦 

 ・事実上の養親子 

 ・未認知の子などのように、形式的には相続権を有しないが、実質的には相続人に該当するような親族

 ・報酬以上に献身的に看護に尽くした付き添い看護婦

 ・被相続人により長年経営されていた学校法人

 ・菩提寺

⑦前項の規定によって処分されなかった相続財産は国庫に入ります。

 

(所長)

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