共同遺言の扱い
今月の民法サークル「共同遺言の扱い」
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【2月民法サークル】
2月の民法サークルのテーマは「共同遺言」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。
(2016年2月26日 実施)
【例題】
『父が他界し、母と私たち3人の子が相続人になりました。父の遺産の分割協議に際し、母が「今は分割を許さない。私が死んだ時にこの遺言に従って分割してほしい」といって、父母共同で作成した遺言を出してきました。父母が2人で築き上げた財産ですから、2人の思うように分割したいと思いますが、現在お金に困っている妹が、そんな遺言は無効だといってすぐに分割するよう要求しています。』
【解説】
民法第975条【共同遺言の禁止】に「遺言は、二人以上の者が同一の証書でこれをすることができない。」と規定されています。 遺言は単独でしなければなりません。
例題の場合、遺言を父母が連名で作成し、父母連名の署名押印がある場合は、その遺言は形式的に無効といえます。他に父の作成した遺言が見当たらなければ、法定相続の規定に従って相続手続きを行うことが必要です。母と3人の子の相続人全員で遺産分割協議をして父の遺産を分割することになります。
この場合に、母は法定相続分1/2、3人の子はそれぞれ法定相続分として1/6の権利を持ちます。相続人全員が合意した場合は、遺産をどのような割合で分けてもよいことになっています。
ただし、遺言の文面中に「父母共同で作成した」という文言があっても、(例えば)父が形式的に単独で作成した遺言(父のみが遺言者として署名押印)であれば、その遺言は有効です。遺言相続の規定に従って相続手続きを行うことになります。
尚、日本では共同遺言は禁止されていますが、ドイツなど共同遺言が可能な国もあるとのことです。
(所長)