遺言執行者
今月の民法サークル「遺言執行者」
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【4月民法サークル】
4月の民法サークルのテーマは「遺言執行者」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。
(2016年4月22日 実施)
【例題】
『父が遺言を残して他界しました。母と子供たちに争いがないよう財産分けを細かく指示してありました。遺言の最後に、長男である私に遺言執行者となるように書かれておりましたが、実際私にはそんな処理能力がありません。遺言執行とはどんなことをすればいいのでしょうか。私に無理な仕事だと判断されたら、私はそれを断れるのでしょうか。』
【解説】
民法第1012条(遺言執行者の職務権限)「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」
民法第1013条(相続人の処分権喪失)「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」
以上のようにと規定されています。
遺言執行者とは、遺言に指定されたことを実行する権限を与えられ、その実行を任務とする人です。簡単に言うと、遺言執行者は、自身の実印を使って、遺言の内容を実現するための預貯金の口座解約や不動産の名義変更などを すべて実行することができます。
遺言における遺産分割の内容が、一部の相続人(又は相続人全員)にとって不公平な扱いとなっており、遺言の実行に当たって一部の相続人の協力が得られないと予想される場合などに、遺産分割をなどスムーズに実行させるために、遺言者が遺言執行者を指定することが考えられます。
争いが予想される場合などに、遺言の中で予め弁護士さんなどを遺言執行者として指定し、遺言の確実な実行を図るのです。弁護士さんなど専門職に遺言執行者を依頼する場合は、当然ながら報酬を支払う必要があります。
私自身の遺言作成支援業務における経験では、公証役場で公正証書遺言を作成する場合、必ずと言っていいほど、公証人から遺言執行者を指定するようアドバイスがあります。遺言執行者に指定する人は、財産を最も多くもらう人自身、又はその配偶者である夫、その親族などです。(弁護士さんなどの専門職を指定する訳ではありません。)これにより、遺言の実行が行いやすくなります。
遺言によって初めて自分が遺言執行者に指定されていることを知った場合、その就任を断ることも可能です。遺言執行者を指定する場合、遺言者は予め遺言執行者となる本人に承諾を得ておくことが重要です。
(所長)