越境建築に対処するには
静岡大学名誉教授の平野先生を囲んで月一回開いているサークル活動「民法サークル」において、平野先生からお話し頂いた内容を、毎回かいつまんで紹介しています。
【2017年6月民法サークル】
6月の民法サークルのテーマは「越境建築に対処するには」に関するものでした。今回紹介する例題は次の通りです。
【例題】
『隣家が物置小屋を作るといって増築を始めました。私の所有地に侵入して土台が設けられていますので、このままでは越境して建築されてしまいます。私の土地内に建てないでくれと強く抗議したのですが、聞き入れてくれません。どうしたらよいでしょうか。』
【解説】
たとえ越境していても、物置小屋が完成してしまうと、不動産としての権利(物置小屋の所有権)が所有者に生じます。物置小屋を不動産として登記していなくても権利は生じます。
作り始めてすぐであれば、土地の所有権侵害で撤去させることができますが、完成してしまうと、物置小屋自体の所有権は隣家にありますから、とても厄介なことになります。
この場合どう対処したらよいか、どのような手続きを取ればよいかというと、裁判所に対して次の二つのことを同時に行います。
①「境界確認の訴え」を起こします。
⇒隣家が土地の境界を越境していることを裁判で明確にします。ただし、解決までに長い時間がかかります。この解決までの間に物置小屋が完成してしまうと、隣家に物置小屋の所有権が生じます。
②「差し止め請求」を起こします。
⇒隣家に物置小屋の建設を中断させるために、建築を止めてくれという差し止め請求を裁判所に行います。短時間で建築差し止めの命令(仮処分)がでて、建築を中断させることができます。
尚、この差し止め請求は素人でもでき、難しくないそうです。
(所長)