相続放棄者がいる場合の相続手続の進め方
2021年3月下旬、お客様から相続手続の依頼を頂きました。
亡くなった方(被相続人)はA様で、埼玉県にお住いでした。依頼者は、A様の晩年に生活の手助け等をしてきた妹のB様です。B様は、都内にお住いのB様の息子さんと連携して、家族皆でA様のお世話をしてきました。
A様は配偶者も子供いなかった為、相続人はA様の妹であるB様をはじめ6人の兄弟姉妹ということになります。ただし、B様以外の兄弟姉妹は既に亡くなっていましたので、その子供(A様の甥姪)にあたる9名とB様の計10名が相続人ということになります。
B様から相続の手続を始める旨を相続人である甥姪に連絡して頂いたところ、6人の甥姪からは、相続放棄をしたと連絡があり、3名の甥姪からは、相続の手続には協力すると連絡がありました。従って、今回は相続放棄を含めた遺産相続の手続きをすることになりました。
相続放棄を含む遺産の相続手続きは次のように行いましたので、参考までに経緯を記載します。
(1)相続人の特定相続人を特定するために必要な全ての戸籍謄本を取得します。
今回は、被相続人A様、A様の父母、A様より先に亡くなった兄姉の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、及びA様の9名の甥姪とB様の現在に至る戸籍謄本を取得する必要がありましたので、集めた戸籍謄本の数はかなりの数になりました。
取得した戸籍謄本により相続人の検証・特定を行った結果は、既知の10名が相続人であることが確認できました。
(2)相続放棄者の照会
相続放棄者を確認するには、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述の有無についての照会」をします。
照会ができるのは相続人又は利害関係者(債権者等)に限られますので、B様に照会の手続きをお願いしました。照会先は埼玉県内の家庭裁判所(支所)です。
被相続人等目録に照会をしたい相続人9名(B様を除く)の氏名を記載したうえで、照会書、指定された添付書類(被相続人の住民票の除票、照会者と被相続人の戸籍謄本、照会者と被相続人の関係が分かる戸籍謄本、照会者の住民票、相続関係図)の原本及び写し(原本還付を求める為)、及び返信封筒を添えて家庭裁判所に送付して頂きました。
その結果、B様宛に、6名が相続放棄をしていること、その事件番号、受理年月日が記載された回答書が届きました。
(3)相続放棄の証明書の取得
相続放棄の証明書を取得するには、上記の家庭裁判所に「相続放棄申述受理証明書」の交付申請をします。相続放棄者1人につき150円の交付手数料(印紙)が必要です。
申請できるのは相続人又は利害関係者に限られますので、B様に申請の手続きをお願いしました。
申請書1枚ごとに上記回答書の事件番号を記入し、添付書類として申請者の戸籍謄本の写し、被相続人との関係がわかる戸籍謄本の写し、及び返信封筒を添えて家庭裁判所に送付して頂きました。
その結果、B様宛に、相続放棄をした6名の方の相続放棄申述受理証明書が届きました。
(4)遺産分割協議
相続放棄者が6名であることが明確になりましたので、遺産分割協議に参加できる相続人は4名です。4名で被相続人A様の遺産をどのように分割するかを決めます。
遺産分割協議が整い、4名の相続人が遺産分割協議書に署名、押印し、印鑑証明書も付けて頂きました。
(5)預貯金解約
金融機関の窓口で預貯金の解約を行うには次の書類を提出する必要があります。相続放棄者がいる為、通常必要な①〜④に加えて⑤も必ず提出する必要があります。
預貯金を相続する人に、金融機関で手続を行って頂きました。
①遺産分割協議書
②印鑑証明書(4名分)
③相続関係説明図
④戸籍謄本
⑤相続放棄申述受理証明書(6名分)
※尚、今回は戸籍謄本の数が非常に多い為、金融機関での確認作業等が非常に煩雑になることが予想されることから、法務局で「法定相続情報証明(一覧図)」の交付を申請し、③相続関係説明図、④戸籍謄本の代わりに⑥法定相続情報一覧図を提出する形にしました。
(6)不動産の名義変更
不動産の名義変更を行うためには、上記(5)に記載した書類に加えて、被相続人A様の住民票の除票、不動産を相続する人の住民票と委任状、不動産の評価証明書と謄本などが必要になります。
こちらについては、私が窓口となり書類一式を揃えて、司法書士さんに手続きを依頼しました。
以上の様に手続きを行い、依頼業務を完了しました。(所長)